『シベリア鉄道』の旅
極東の街『ハバロフスク』から
『シベリアの真珠』と謳われる『イルクーツク』まで
3,308キロメートルの距離を
『シベリア鉄道』三日三晩の旅をいたしております。
思へば、鉄道網が飛躍的に発展した日本
早朝に東京を出れば、『新幹線のぞみ』で
大阪のオフィスで朝9時からの会議に
出席できてしまう咋今
すでに日本では、ほとんど姿を消してしまいました旅の醍醐味が
ここロシアにございます。
情緒あふれる『シベリア鉄道』の旅でございますが
『日本』では考えられぬほどの長い道のり
車中で快適にお過ごし頂くために
お知りおきいただきたい事柄につきまして
お話しさせていただきます。
貴重品はトランクの中にしまい施錠する。
『シベリア鉄道』には、一車両に2人の車掌さん
(プラヴァドニーク)が勤務しており
車両内の保安、秩序の維持に
24時間常に目を光らせておられます。
また鉄道警察隊の隊員の方々が
常に車内を巡回しておられます。
『シベリア鉄道』車内の治安は
『安全』と考えてよろしいかと存じます。
しかしながら、不特定多数の人々が
乗り降りする『シベリア鉄道』
パスポートや
クレジットカードの入ったお財布など
貴重品はトランクにしまい、施錠して
下段であれば椅子の下
上段であれば通路天井裏の格納スペースに
しまって頂ければと存じます。
15分以上停車する駅では、車外でストレッチを
コンパートメントで長時間座っておりますと
肩が凝ったり、足がむくんだり
血行が悪くなりがちです。
15分以上停車する駅では、なるべくホームにお出になり
軽くストレッチをされることを、おすすめいたします。
これは、朝5時30分
マグダガチ(МАГДАГАЧИ)の駅で
添乗員の小林さんがご持参されたレコーダーから流れる
『NHKラジオ体操第一』のメロディーで
ツアーの皆さまと、『ラジオ体操』しているところでございます。
みんなで輪になって、体をうごかす
『シベリア山中』での『ラジオ体操』
それはまた、格別でございます。
少々余談で恐縮でございます。
かつてこの『極東シベリア地域』には
『幻の国家』が存在しておりました。
『極東共和国(Дальневосточная Республика )』
1918年 『ポリシェビキ』によって
政権を掌握した『ソビエト共和国』
共産主義勢力を牽制するために
『イギリス』
『フランス』
『イタリア』
『カナダ』
『アメリカ』
『中国』
『日本』の7カ国は
『ロシア革命軍』に捕らえられた『チェコ軍』救出の名目で
連合して『極東シベリア地域』に派兵しました。
中でも『日本』は73,000人という
他の連合国を遥かに上回る兵力を差し向け
他の連合国がこの地から撤退した1920年以降も駐留します。
いわゆる『シベリア出兵』でございます。
当時『ポーランド』と緊張状態にあった『ソビエト共和国』は
遥か『極東地域』に兵を差し向ける余裕はありませんでした。
そこでヴェルフネウディンスク(現在の『ウランウデ』)
を首都とする『極東共和国』を樹立し、『日本軍』との和平交渉を行います。
この『極東共和国』
実態は『ポリシェビキ』の傀儡政権でしたが
『極東地域』における『緩衝地帯』としての役割を果たしました。
その後『日本軍』と同盟関係にあった
『白軍』の敗退と『パルチザン』による遊撃、極寒により
1922年『日本軍』はこの地から撤退を余儀なくされます。
これにより『極東共和国』は自然消滅し
この地は元どおり『ソビエト』の領土となりました。
静かな山々に囲まれた『マグダガチ』の街
現在は『ユーラシア大陸』の物流大動脈としての役割を担う
『シベリア鉄道』の駅として発展してまいりました。
駅周辺には2つの大きなショッピングセンターやカフェがございます。
コンパートメントに戻ると
列車は静かに発車いいたします。
昨日『ハバロフスク』の
ショッピングセンターで購入した
黒パンとプチトマトが、朝食でございます。
サモワールからいつでもお湯がいただけます。
さて、コンパートメントを出て
通路突き当たり左手には
『サモワール』(給湯器)がございます。
ここから、いつでもお湯を頂けますので
日本から持ち込んだ粉末のコーヒーやお茶
味噌汁を溶いて、いただくことができます。
ちなみに、サモワールも暖房も
燃料は『石炭』でございます。
冬は、マイナス40度を下回る
過酷な環境
もし仮に、暖房設備が電気であった場合
真冬に電気設備のトラブルで
列車が原野の真ん中に立ち往生した場合
電気の供給が停止したことにより
暖房設備も停止し
車内の人々が凍死してしまう恐れが
あるからでございます。
その点石炭であれば
救助や電気設備の復旧を待つ間
暖房設備を稼働させることが
可能でございます。
トイレは各車両に2箇所
トイレは、各車両とも
前後に一つずつ、2か所ございます。
列車によっては、設備が古い場合もございますが
車掌さん(プラヴァドニーク)が
一日のうち最低2回は、拭き掃除をしてくださいますので
綺麗でございます。
まず、化粧室の扉を開けますと
便座と洗面台がございます。
洗面台では顔を洗ったり
歯を磨くことができます。
(車掌のナスターシャさん
休息時間帯に、この洗面台で
素敵なブロンドの御髪を
洗われていたようです。
ハードな勤務に、頭の下がる思いでございます)
便座はもちろん水洗式ですが
足元のペダルを踏むと、
水が流れると同時に
便器の底のカタパルトが開きます。
その下には、線路が見えます。
つまり、私達の行動の結果生じた副次的生成物は
重力に従って落下し
シベリアの大地と同化することと
なるのでございます。
トイレには、使用禁止時間あり!!
洗面所は、駅に着く30分前と
駅発車後30分後までは
施錠され、使用できなくなります。
都市部への、衛生上の配慮でございます。
洗面所の使用禁止時刻は
扉にタイムテーブルが
掲示されております。
旅出発当初、この点について
私は少々心配でしたが
そう頻繁に、駅に停車するわけでもなく
車内におりますと、あまり動きませんので
お腹もすかず、喉も乾かずという感じで
困ることはございませんでした。
あらかじめ、時刻表で
次の駅への到着時刻を把握しておき
『ああ、そろそろだな』
という頃合いを見計らって
適宜、用を済まされることを
おすすめいたします。
ポケットティッシュをお忘れなく
また、ときどきトイレットペーパーが
切れていることもございますので、
念のため、ポケットティッシュを
常時お持ちいただくと
よろしいかと存じます。
洗面所は、車掌さんが
1日に最低2階は、お掃除してくださいますので
清潔でございます。
車内掃除も頻繁に
日も高くなったころ
車掌さんのセルゲイさんが、箒と塵取りで
通路とコンパートメントの掃除を
始められました。
ナスターシャさんが
床を雑巾がけされていた時には
さすがにびっくりいたしました。
まるで、『おしん』?・・
車掌さんのお仕事は重労働!
各車両に2人ずつ乗務されている
プラヴァドニーク(車掌さん)
そのお仕事は、多岐にわたります。
乗車の際の切符の確認
シーツの配布と回収
車内の清掃
物品の販売
駅到着に際し、乗り過ごし回避の為の確認
駅到着時の、タラップの上げ下げと乗客確認
多岐にわたるお仕事を
ウラジオストックからモスクワまでの
6泊7日の行程を
12時間交代でこなしていらっしゃいます。
これは、私達の想像を超える
大変な重労働にちがいございますまい。
私達が、シベリア鉄道で快適に旅ができるのも
車掌さんたちのおかげでございます。
列車は、ウルシャ(УРУША)の駅に到着しました。